「トイレ」から考える先人たちの恐るべき抽象化シリーズ
3回目の更新にして、トイレの話と、
なかなか酷いブログになってしまいました。
ノリントン提督です。
トイレと言っても下品な話ではないので、それだけは事前にお約束しておきます。
さて、物事の本質を捉える訓練と言えば「なぜ?」を繰り返すのが有名ですが、僕が大好きなものに「抽象」があります。
抽象とは、特定の対象からある要素や性質だけを抽出することを言います。
アメリカの鉄道が衰退してしまった理由は、自社のことを「鉄道産業」と狭く定義してしまい、「輸送産業」と定義しなかったためである、という有名なマーケティングの事例があります。
鉄道ビジネス→輸送ビジネス
これが、抽象化ですね。
自社をより本質的な「輸送ビジネス」と定義できれば、航空やタクシーなど、他の輸送のニーズに応えることができたはずだということです。
マーケティングの本で最初にこれを読んだ時、なるほどなぁと思わされたものでした。
抽象化のトレーニングを積めば、このように問題の要点を抜き出したり、解決策を別の視点で置き換えて解決することができるようになる(らしい)
ということで普段から意識するようにしていました。
そんな中、僕の初心者抽象化トレーニング脳に引っかかったのが、
トイレです。
トイレって、めちゃくちゃいろんな呼び方がありますよね。
ざっと調べただけでも、日本語で50種類以上。
「お手洗い」「化粧室」「便所」「雪隠」「手水場」「厠」「桶屋」「交屋」「糞屋」「変屋」「閑所」「閑考場」「隠所」「装物所」「鬢所」「雪陣」「雪陳」「青椿」「怱雪隠」「思按所」「分別所」「洗所」「大便所」「小便所」「後架」「更衣室」「起居」「用達所」「用立所」「御用所」「ふろ」「ふろや」「フール」「せんだぶく」「いきがめ」「川便所」「はばかり」「不浄」「山」「お山」「渡辺」「おばさん」「はばから」「つめ」「遠方」「杉屋」「東司」「おとう」「西浄」「東浄」「登司」「毛司」「洒浄」「高野山」「持浄」「流廁」「廁院」「軒」「背屋」「かど」
など。
英語でも、
toilet/ladies' room/men's room/gentlemen's room/bathroom/ restroom/washroom/lavatory/W.C./the John
など。
めちゃくちゃ多くの言い方があります。
トイレは汚らしいものであったため、直接言うことを避けたことがこの大量の呼び名発生に繋がっているようですね。
もうお気づきかもしれませんが、この「トイレをどう表現するか」こそ、先人たちの抽象化の賜物だと思うのです。
上の表現を分類して整理してみたいと思います。
①用を足すことをそのまま抽象しちゃったタイプ
「大便所」「小便所」「糞屋」など
②用を足すのをちょっと工夫して抽象したタイプ
「不浄」「交屋」「便所」「御用所」など
③用を足したものをどう処置するかを抽象したタイプ
「川便所」「厠(川屋)」「流廁」「lavatory」「W.C.」など
④風呂が一緒にあることを利用して抽象化したタイプ
「ふろ」「ふろや」「washroom」「bathroom」など
⑤風呂からさらに発展して着替えることを利用して抽象化したタイプ
「toilet」「装物所」「更衣室」など
⑥空間としてごまかして抽象化したタイプ
「ladies' room」「men's room」「隠所」
⑦トイレで一休みすることを抽象化したタイプ
「restroom」「閑所」「閑考場」 など
⑧身だしなみを整えることを抽象化したタイプ
「化粧室」「鬢所」など
⑨手を洗うことを抽象化したタイプ
「お手洗い」「手水場」など
なんて抽象化テクニックが満載なこと!
トイレだけでこんなに抽象化する要素があるとは驚きですね。
この中で個人的に好きなのは、最後の「お手洗い」です。
トイレに行くことを表現してください!と言われて、果たして「手を洗う行為」を抽象化するでしょうか?
外で手を洗うという行為が発生するのは確かに、トイレくらいしかないですし、それでいて上品で繊細な表現で、本当にお見事だなぁと思います。
身の回りの抽象化事例、みなさんも探してみてくださいね。